オフサイド論議再び
えーと、昨日書いたことの他に決定的資料が出てきたので、整理の意味もありまとめることにした。今日もあちこちで啓蒙活動してたんやけどね。別にオフサイドや!誤審や!アメリカの陰謀や!と言いたい人は言わしててもええんやけど、4級審判魂がわしを活動に走らせてしまう(笑)。
まあ、元々サッカーは審判の裁量が大きく、誤審と思われる場面が多いスポーツ。その中でもオフサイドについてはちと難しい。わしとしては正しい知識を持ってサッカーを見た方が、審判の裁量の幅があることを理解してる方が、ストレスたまらんよ、っちゅう意味でやっとる。
それと、もちろんサッカーを実際する人には知って欲しいっちゅうのんがあるわな。さて、まとめようか。
まずはオフサイドルール条文を書いておく。重要なところだけ抜粋ね。
第11条 オフサイド
オフサイドポジション
オフサイドポジションにいること自体は反則ではない。競技者は次の場合オフサイドポジションにいる:
● 競技者がボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手ゴールラインに近い反則
ボールが味方競技者によって触れられるかプレーされた瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによって積極的にプレーにかかわっていると主審が判断した場合にのみ罰せられる:
● プレーに干渉する
または
● 相手競技者に干渉する
または
● その位置にいることによって利益を得る
あのプレーでオフサイドを主張する人はだいたいこんな感じになっとる。
(A)FK時に16番ワンバックがオフサイドやろ派 1)FKが蹴られた時点でワンバックはオフサイドポジション。 2)FKが蹴られた直後、ワンバックはプレーに関与していなかった。 3)しかしワンバックは7番ボックスがトラップする前にターンしてボールを追った。 4)この”ターンしてボールを追った”ことによりワンバックはプレーに関与したのでオフサイド。
この主張は最もらしいし、関与をこういう風に解釈をわしも実際にしてきた。ところが昨日示したFIFAの資料(http://www.fifa.com/fifa/handbook/laws/2004/QA/Q&A2004_E.pdf 27ページ9番)には「干渉というのはボールを触ること」のような意味が書いてあった。さらに探したところ、次の決定的資料が出てきた。
オフサイドの判定に関する解釈(国際サッカー連盟 回状874号)
(省略)“プレーに干渉する”とは、どのように解釈すべきか?
・ 味方競技者がパスした、あるいは触れたボールをプレーする、または触れる。“相手競技者に干渉する”とは、どのように解釈すべきか?
・ 相手競技者がボールをプレーする、あるいはプレーできるようになることを妨げる。例えば、明らかにゴールキーパーの視線をさえぎる、あるいは動きを邪魔する。
・ ボールの方向に位置して、動く、あるいは(プレーの)そぶりを見せることによって、相手競技者を欺く、もしくは惑わせる。“その位置にいることによって利益を得る”とは、どのように解釈すべきか?
・ オフサイドポジションにいてゴールポストやクロスバーから跳ね返ったボールをプレーする。
・ オフサイドポジションにいて相手競技者から跳ね返ったボールをプレーする。論議をもたらすような出来事は常に起こるであろう。しかし、競技規則に規定されているように主審の決定は最終である。これらのより明確な指示によって、審判員が一定の基準に則った判定が出来るようになると確信している。
国際サッカー連盟 事務総長 ウルス・リン
従って、この解釈によれば、ワンバックはボールを追ったが、触っていないつまりプレーにも干渉してないし、相手競技者にも干渉していないし、利益も得ていない。よってこのプレーでオフサイドは取れないわけやね。
(B)16番ワンバックは最後にパスを受けたからオフサイド派 1)FKが蹴られた時点でワンバックはオフサイドポジション。 2)FKが蹴られた直後、ワンバックはプレーに関与していなかった。 3)しかしワンバックは7番ボックスがトラップする前にターンしてボールを追った。 4)この”ターンしてボールを追った”は関与に当たらない。 5)しかしワンバックはボックスのラストパスを受けた。 6)ワンバックは”FK以降の一連のプレー”に関与したことになるのでオフサイド。
これについては無理がある。オフサイドは持ち越さへんのでな。ソースは昨日も書いたし、今日も書いとるFIFAの資料(http://www.fifa.com/fifa/handbook/laws/2004/QA/Q&A2004_E.pdf 26ページ7番)やね。自動翻訳サイトによると、
オフサイドの位置には別の攻撃者Cがありますが、
プレーヤーAはオンサイドの位置のチーム仲間Bへのゲームを始めます。
プレーは継続します。また、後で、プレーの次の過程では、
プレーヤーBはプレーヤーC(この人は今オンサイドの位置にいる)のもとへボールを送ります。
彼はゴールを得点します。レフェリーはどの処置を講じますか。レフェリーはゴールを与えます
プレーヤーCがボールを受け取った時彼がオンサイドの位置にいたので。
彼は、彼が活発なプレーに関係していなかったので、
第1段階中のオフサイドの位置にあったので罰せられようとしませんでした。
これよりオフサイドを持ち越すことがないことがわかる。またルール条文でも「ボールが味方競技者によって触れられるかプレーされた瞬間にオフサイドポジションにいる競技者」と明記してあり、そのプレーのみで判断されることがわかる。つまり、ワンバックのオフサイドの判定はFKを蹴った瞬間の状況によって判断されるものであり、その後ラストパスに絡んだ事はFKの瞬間の事象とはなんら関係がないことが、普通に読めばわかるはずやね。よって、ここでオフサイドというのは無理があるわけ。
(C)FK時点でオフサイド派 1)FKが蹴られた時点でワンバックはオフサイドポジションにいた。 2)FKなんで、ワンバックが自陣に向かって動いていてもプレーに関与したことになる。 3)だからオフサイド。 4)Jなんかでもラインを上げた瞬間によく笛吹かれてる
これについては(A)に書いた資料だけでも否定できるんやけど、確かにJなんかでもよくこういうのを見る。実際にあるだけに判断は難しい。これについての解釈は次の通り。
ラインの中で相手競技者があがるのを邪魔するような駆け引きを行ったので、相手競技者に干渉したとみなされる。もしくは2列目(オンサイドの位置)から誰も飛び込んで来ず、オフサイドポジションの選手だけが追いかけたので、そのまま触らずともオフサイド(正式には触ってもオフサイドだろうが)。このどっちかやね。
今回の場合は相手競技者に干渉してないとみなされたと思う。ビデオ見ても日本の選手があがるのを阻害するような動きをしたアメリカの選手はいないからなあ。というわけで、これもオフサイドを取るのは無理。
以上3つにより、あのプレーのわしの解釈はほぼオンサイドっちゅうことになる。もちろん、いろんな場面でアレをオフサイドと審判が判断する余地も残されてると思うが、ハッキリと「誤審じゃ、ボケ、日本は誤審で負けた」っちゅうレベルのものではないわな。そういう評価をすることは、なでしこジャパンに失礼やと思うんで。
最後に監督と選手のコメントをリンクしておく。
http://athens.yahoo.co.jp/hl?c=athens&d=20040822&a=20040822-00020682-jij-spo
http://www.jsgoal.jp/club/2004-08/00010810.html